薬剤師ドリブン

薬局薬剤師の稿本とたまに役に立つ資料

【稿本】今冬のインフルエンザ5つの懸念

今シーズンのインフルエンザ、何かおかしい・・・
疑問の先に浮かんだ「5つの懸念」

①流行の異常な立ち上がりのなぜ?
沖縄県では10年ぶりに9月にインフルエンザ警報が発令された。沖縄県での夏季のインフルエンザ流行は今年に限った話ではないが、メカニズムの詳細は不明。インドネシアシンガポールのような赤道直下では年間を通して流行しており、こうした地域からの旅行者が持ち込んだ可能性が高い。

②ゾフルーザに付きまとう耐性の影
ゾフルーザは1回の内服で治療が完結する利便性の高さが利点RNAポリメラーゼ(ウイルス複製を担うタンパク質)の変異により感受性の低下を示すウイルス(耐性変異ウイルス)が高率に出現する懸念がある。
治療歴のない小児患者から耐性変異ウイルスが検出された事例が複数報告され、家庭内でのヒト-ヒト感染例も国内で確認。ゾフルーザで症状が長引いた小児例もある。現時点ではデータが不十分だが、「12歳未満の小児に対するゾフルーザの積極的な投与は推奨しない」との指針が2019/2020シーズンのインフルエンザ治療指針から明示された。

③成人にもインフルエンザ脳症リスク
働き盛りの若い人でもインフルエンザ脳症での死亡例がある。ほとんどは軽症だが死亡割合は小児より多い。2010/11-2014/15年の5シーズンでの成人の発生率は100万人あたり0.19人、2013/14-2015/16年の3シーズンの調査では16歳以上成人では罹患率は0.98と一定数存在する。小児と異なり急性壊死性脳症や出血性ショック脳症症候群など、より致命率の高いタイプが多い。ワクチンの有無、NSAIDsの種類、抗インフルエンザ薬の投与の有無などの解析はまだできていない。患者のプラスアルファの変化に気づくことが大切。

④H1N1pdm09ウイルスに変化の兆し
抗原性が大きく変わるウイルスに警戒する。
2009/10シーズン以降のA/H1N1pdm2009ウイルスの特徴は流行の間隔が短くなって、流行の規模が小さくなっている。抗原性の変化は小規模になっているが、183番目のアミノ酸に変異をもつ多様なウイルス群が出現しているため、抗原性が大きく変化する前兆とも考えられる。

⑤H3N2亜型にはワクチンが効かない?
H3N2亜型ウイルスには卵馴化、流行株との抗原性乖離によりワクチンの効果が懸念されている。
インフルエンザワクチンの効果に影響を及ぼす懸念として「抗原性ミスマッチ」のリスクがある。ワクチンを培養する発育鶏卵内でウイルスが増えやすいように変化してしまう(卵馴化)。また今シーズンのワクチン株は「サブグレード3C.3a」だが2018年9月-2019年7月までに解析した国内株は「サブグレード3c.2a」という抗原性解析から抗原性のミスマッチが起こる可能性がある。

●日経メディカル 2019.12、p060-75