薬剤師ドリブン

ただ怠惰に生きたい四国在住の薬剤師が、どうしても放っておけない日々の疑問や課題を探求する様子を描いたブログです。

【稿本】一歩進んだハイリスク薬管理

中毒量と有効域が狭く投与量の設定が難しい薬や、重篤な副作用が起こり得る薬など、より注意が必要な薬は「ハイリスク薬」と呼ばれ、特に十分な管理指導が求められる。

医療の高度化によりハイリスク薬は増加し、それを服用する患者の高齢化も進んでいることから、ハイリスク薬の管理の重要性が高まっている。

2019年12月に交付された薬機法・薬剤師法では、薬剤交付時のみならず、服用期間を通うじて必要な指導を行う義務が課された。どの患者を対象にするか悩んだら、ハイリスク薬を服用する患者をフォローアップしてみる。また検査値を記載した処方せんを発行する医療機関が増えているので、ハイリスク薬を管理する環境が整いつつある。さらに病院と連携して算定できる「特定薬剤管理指導加算2」や糖尿病患者に対して服薬フォローした場合の調剤後薬剤管理指導加算も新設された。

ハイリスク薬の管理は薬剤師の本来業務であり、全ての薬局で十分に取り組めば、必ず薬物治療の安全性は高まるー日経DI2020.03

今こそハイリスク薬の管理を見直し、時代にあった指導を行う必要がある。

用量
ハイリスク薬の処方量が適切かどうかを判断するために特に確認すべきなのは「腎機能」「体重」「身長」である。処方に腎排泄型の薬剤が入っていたら、尿量の変化、体重の増加などの浮腫兆候、倦怠感や貧血症状を確認する。腎機能から用量を検討するときには体格に注意する。寝たきりで運動量が極端に少ない痩せた高齢者の場合、腎機能が過大評価されることがある。SCr0.6mg/dL未満であれば、SCr0.6mg/dLを代入して腎機能を推定する(ラウンドアップ法)。

経口抗がん薬では、用量チェックの際に、腎機能や体表面積など様々な視点からの考察が必要になる。TS-1やカペシタビンは体表面積で投与量が決まる。チェックシートの活用でポイントを踏まえての用量・副作用の評価が可能になる。

副作用
副作用の早期発見には、患者自身が体調変化に気づくことが重要。そのため初期症状はわかりやすく伝えておく。専門用語ではなく分かりやすい言葉で伝える。説明する順序やタイミングも需要。初回服薬指導時には主な副作用のほかに服用開始直後に発現する可能性のある副作用については対応も含めて詳しく説明する。自己判断で中止しないように患者によっては電話でフォローを行う。また副作用を捉えるために客観的なデータを測定してもらう。例えば血圧や心拍数、自己血糖測定など。

相互作用
特に他科からの処方に要注意。お薬手帳の確認と、他に服用している薬のことは必ず確認する。また併用注意は今後起こり得ることを想定しながら注意深くフォローする。何が起こるかまでを具体的に想定しておく。

休薬
休薬期間が必要な薬剤は投与スケジュールを確認し、服用日と服用方法を必ず確認。薬歴と注意深く見比べることが重要。休薬期間の意味について特に強調する。休薬開始時に電話でフォローするなどきめ細やかな指導が、ハイリスク薬を服用している患者の安心感につながる。

【参考資料】日経ドラッグインフォメーション2020.03