糖代謝異常に伴う神経障害が認知症の発症に深く関わる一群があり、我々はこれを”糖尿病性認知症(diabetes-related demenitia, DrD)と呼んでいる。
−日本薬剤師会雑誌 第72巻 第1号 令和2年1月1日 p12
これまでの多くの疫学調査や臨床研究から、糖尿病と認知症の間には密接な関連があることが報告されている。糖尿病による全認知症の発症リスクはハザード比で1.7倍、アルツハイマー型認知症(AD)は1.6倍、血管性認知症は2.2倍になることが示されている。
発症メカニズムは多彩である。①AD病理の促進、②動脈硬化や脳血管障害、③糖代謝異常などの合せ技によって認知症の発症を早めているのかもしれない。③糖代謝異常は血糖管理により治療や予防が期待できる。
一般に、空腹時血糖値よりも食後の高血糖や血糖の日内変動が認知症の発症リスクとなりやすい。HbA1cが7.0%を超えると認知症の発症リスクが高くなり、逆に低血糖発作を数回繰り返した場合は起こさなかった場合と比べて認知症の発症頻度も2倍近く高くなることが示されている。
−日本薬剤師会雑誌 第72巻 第1号 令和2年1月1日 p14
血糖コントロール目標値は低血糖を起こさないように個別に設定する。平均血糖値だけでなく、食後高血糖や血糖の日内変動を抑え、低血糖を予防することが重要。服薬指導のときは目標値の確認、食後高血糖、低血糖に留意する。