薬剤師ドリブン

ただ怠惰に生きたい四国在住の薬剤師が、どうしても放っておけない日々の疑問や課題を探求する様子を描いたブログです。

【図解】アウトカムと疑問

代用のアウトカムと真のアウトカムとは?

治療をしたり、薬を投与するなどの医療介入が人に及ぼす影響をアウトカムといいます。たとえば糖尿病患者が薬を服用することで血糖値やHbA1cが低下する、合併症や透析・死のリスクが減るというのがアウトカムです。

真のアウトカムとは?

人生における重大な”転帰”のことを真のアウトカムと呼びます。
薬剤効果の事実的側面を考えるときに最優先で考慮されるのが患者の幸せです。でも「幸せ」って主観的感情であり、他者の物差しで測れませんよね。なので患者の「幸せ」を客観的に定量可能な死亡や合併症の発症という人生の重大な”転帰”に設定しました。つまり真のアウトカムの改善は患者の幸せにつながるといえます。

代用のアウトカムとは?

血圧値や血糖値・HbA1c、検査値など将来的な予後の悪化を予測するものを代用のアウトカムといいます。注意すべきは、あくまで予測にとどまるという点です。
常識的に、糖尿病治療においてHbA1cを下げれば合併症を予防でき長生きできると考えられますが、厳格に血糖値をコントロールすると総死亡率が22%増加する可能性が示されるという臨床研究もあります。臨床検査値がよければ、健康状態を維持できるとは限りません。つまり「代用のアウトカムの改善が真のアウトカム」を改善するわけではないということです。概念的側面が身に染み付いているとこういう錯覚に陥りやすくなります。

背景疑問と前景疑問とは?

薬はどのように効くか?のような普遍的な回答が得られる理論に関する疑問を「背景疑問」、どのくらい寿命が延びるか?合併症リスクをどの程度低下させるか?というような普遍的でない患者個別の事実的な疑問を「前景疑問」と呼びます。

臨床において「背景疑問」は疑問全体の一部でしかありません。経験年数を経ると、「前景疑問」の占める割合が大きくなってきます。「血糖値が高い糖尿病では、血糖値を下げると健康的でいられるだろう」という理論的背景ではなく、「血糖値を下げることでどの程度、合併症を先送りでき、長生きできるだろるのか?」という「前景疑問」の提起することが必要です。

薬剤師は薬剤効果に関する「前景疑問」を解決するにあたって、問いをたてて、その問いを解決するための探究を行っています。その探究方法においてEBM(evidence-based medicine)の方法論は「”より洗練された”科学の方法」といえます。

これからの行動に活かすには?

製品資料や論文を読んだり、研修会を受講したとき、その説明が代用のアウトカムか真のアウトカムか意識するとバランスのよい知見が得られる気がします。また、服薬指導のときも単に検査値を問うだけでなく、真のアウトカムへの影響を説明できるようになるとアドヒアランスの向上や薬剤師への信頼があがっていくと思いました。