リンゼスを処方された80代の男性の奥さまからの相談事例。頑固な便秘がつづいているのでリンゼスを処方されたが、1錠服用すると下痢をするので半分に割って服用してもよいかと質問をうけたのでその対策を考察してみた。
結論としては、服用直前に半錠を服用し、残った分は廃棄してもらうように説明した。
なぜそのような結論に至ったかの考察は以下のとおり。
対策の検討
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半錠にしてみる
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薬を変更する
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服用方法を変えてみる
1.半錠にしてみる
製剤に関する項目
苛酷試験 湿度|25℃、75%RH(暗所) シャーレ
1日後に類縁物質及び水分で規格を逸脱する顕著な増加を認め、7日後には溶出性及び定量において規格内での変化を認めた。リンゼス錠インタビューフォーム,P8|アステラス製薬
この記載からPTP包装から取り出して1日後には規格を逸脱してしまうことが考えられる。
特殊な加工は施しているか?
添付文書でフィルム コーティング錠になっている理由を確認。徐放製剤のような特殊な加工はしていないため、半錠にすること自体は大丈夫だろうと推察される。
アステラス製薬メディカルインフォセンターに問い合わせ
もちろんメーカーに問い合わせをしても承認外の情報は提供されない。半錠の事例とフィルムコーティングをしている理由を確認した。
→半錠の事例のことは答えてもらえなかったが、同様の相談はあるとの回答。またフィルムコーティングは品質の確保と服用性の向上を目的にしていると回答。
Astellas Medical Netで調べる
やはりリンゼス錠は、外観品質の確保、服用性の向上を目的としてフィルムコーティングを施しているとのこと。さらに粉砕についてのQ&Aもあったが、承認外使用のためあくまで判断材料として使わせていただく。
結語
- フィルムコーティングの理由が品質と服用性の向上のためなので特殊加工は施してなく、薬物動態に関して影響なしと判断した。
- 半錠にしてすぐに服用し、残りの半錠は廃棄することで対処可能だろうと判断した。
2.薬を変更してみる
モビコール®配合内用剤やグーフィス錠®への変更の考えたが、再度受診するのは難しいためこの案は却下。
3.服用方法を変えてみる
食前の服用を食後にしてみてはどうかと考える。結論としては悪手だった。
食前の理由
リナクロチドを食後に投与すると、食前投与した時に比べて、反復投与による薬力学的な変化(便形状スコア、排便頻度及びいきみの重症度スコアの変化)が大きく、下痢(軟便を含む)の発現率が高いことが示されているため、食前に投与する。
リンゼス錠インタビューフォームP10|アステラス製薬
薬物動態
吸収
(略)リナクロチドは、ほぼ体内に吸収されずバイオアベイラビリティは極めて低い。リンゼス錠インタビューフォームP64より抜粋|アステラス製薬
代謝
(略)腸液において、タンパク質分解酵素により、活性代謝物である脱チロシン体に代謝され、更に小ペプチドや天然型アミノ酸に代謝された。リンゼス錠インタビューフォームP65より抜粋|アステラス製薬
作用機序
グアニル酸シクラーゼ-C(GC-C) 受容体を活性化することにより、細胞内のサイクリック GMP(cGMP)濃度を増加させ、腸管分泌及び腸管輸送能を促進するとともに、大腸痛覚過敏を抑制する。 (アステラス製薬株式会社)
リナクロチドは、14 個のアミノ酸からなるグアニル酸シクラーゼ C(GC-C)受容体作動薬であり、結腸上 皮細胞に発現する GC-C 受容体を活性化することにより、細胞内のサイクリック GMP(cGMP)濃度を増加 させ、管腔内への腸液分泌が亢進し、腸管輸送能を促進する。更に、リナクロチドは、ストレスや大腸炎 によって引き起こされる大腸痛覚過敏を抑制する。リナクロチドによるこれらの大腸機能促進作用及び痛覚過敏改善作用が、排便異常並びに腹痛/腹部不快感の改善に寄与していると考えられる。リンゼス錠インタビューフォームP52|アステラス製薬
結論
リンゼス錠はPTP包装から取り出して保存するのは不可であるため、半錠にして服用し、残りの半錠は保管せずに廃棄してもらうことにした。